目次
家族で映画を観る
「ほたるの川のまもりびと」という映画があります。
現在小5の長男が4年生だった昨年、社会科の授業で水やダムについて学習している最中だったこともあり、このポスターを見た瞬間に家族で観ようと決めました。
解説
ダム問題に揺れる小さな集落に暮らす人びとの描いたドキュメンタリー映画。長崎県川棚川の下流にある小さな支流、石木川にダムを作る「石木ダム」計画。この計画は長崎県でもあまり知られていないが、現地に暮らす人びとはダム計画をめぐって半世紀の間、戦いを続けてきた。かつて同じ地域に暮らしていた人びとの一部は補償金を手に土地から去っていった。現在は13世帯54人あまりの人びとが暮らし、四季折々で変化する美しい自然の中でのダム反対活動は彼らの生活の中にいつしか溶け込んでしまっていた。「ただ普通に暮らしたい」という住民たちのごくあたりまえの思いが、映像を通じてつづられていく。CMプランナーとして大手広告代理店に所属する山田英治監督の初ドキュメンタリー作品。
YouTubeに予告編など関連の動画あります。ひとつだけでも是非観ていただきたいです。
ほたるの川のまもりびと(予告編 2分)
KOHBAL【50年間故郷を守り、闘い続ける‘こうばる’のことをご存知ですか?】(4分)
ほたるの川のまもりびと(パタゴニア特別編集 18分)
長男の小学校の授業にて
この映画を見た長男は石木ダム建設問題に関する情報をインターネットで集め、社会科の授業で話したそうです。
内容がよくまとまっているのはこのページですのでぜひ一度ご覧ください。
動画もあります。
問題をまとめると、水不足の解消と洪水防止の2つの点で効果が疑問視されるダムを作るために、住みなれた場所で、人と人、人と自然が結びついた生活を送る人々を追い出す必要があるのだろうか?ということだと思います。
子どもたちの寄せ書き
授業を通して石木ダムの建設問題に疑問を抱いた有志の4年生の生徒たちは、学年末にその思いを「石木川まもり隊」の松本美智恵さん宛に送りました。
長崎からの返信
石木川まもり隊の松本美智恵さん、水没予定地にお住まいの石丸穂澄さんに加え、佐世保市の子どもたちからメッセージやイラストが複数届きました。その中から佐世保市の小学2年生の菜の花ちゃんからのお手紙を紹介します。
「させぼのがっこうでは、そのはなしをするひとがあまりいません。ふじさわのがっこうがうらやましいです。」…石木ダムの建設理由のひとつは佐世保市の水不足解消とされています。
きっと身近な問題だからこそ話題にしにくいのでしょう。無理もありませんが、なんとかならないものでしょうか。そして離れた場所に住む私たちとっても決して関係のないことではないはずです。
「いしき川には、さかながいます。でもとってもかえるときにはにがしてあげてください。」…幼い子どもの優しい氣持ちに反して大人たちは一体何をしようとしているのでしょうか。
家族でこうばるに行く
石木ダム建設予定地の川原(こうばる)では5月の最終土曜日に「こうばるほたる祭り」が行われます。
私たち家族は映画、子どもの授業、寄せ書き、お手紙などでご縁を感じ、ほたる祭りに合わせて現地に行くことを決め、お世話になった石木川まもり隊の松本美智恵さんと連絡をとりました。
2019年5月23日金曜日、神奈川県の自宅から羽田空港に向かい飛行機で長崎空港へ。空港からはレンタカーを借り高速道路を使って約1時間でこうばるに到着します。
最寄りの川棚駅からは車で10分程度と想像よりも街から近い静かな集落です。まず目に飛び込んで来たのは崩された山。しかしこれはダム工事とは関係なく、採石場とのことで後で安堵しました。
次の画像の中央が「付け替え道路」の建設現場です。
しばらく進むとこのような看板が。
これらの看板を見てどのように感じますか?
クルマに貼られていたステッカー
石木川です。この小川にダムが必要なのでしょうか?
腑に落ちません。
松本さんと待ち合わせ
川原(こうばる)のうたの看板がある「こうばる広場」で石木川まもり隊の松本美智恵さんと待ち合わせです。ここからは松本さんに案内していただきながらこうばるを巡ります。
あとで知ったのですが、川原(こうばる)のうたの作詞は松本さんが担当されたそうです。住民の皆さんが歌っている動画を見つけました。語りも入っています。
強制収用が決まってしまった田んぼ。
行政と住民による移転の条件交渉がなされる「石木ダム生活相談所」。
建設現場近くに向かう
歩いて付け替え道路の建設現場近くまで向かいます。
途中「ダム絶対反対」の大きな看板がありました。
看板の後ろ側にはミツバチの養蜂箱が!
水没予定地のお墓
削られた山肌が痛々しい。
建設現場です。普段の座り込みは重機が通る道を塞ぐ形で行われます。この日の午前中もこの場所で座り込みが行われていたのだそうです。
来た道を振り返ったところ。座り込みの時に煮炊きするスペースがありました。この場所では、真夏以外はお湯を沸かしてコーヒーが振舞われ、寒い時期はぜんざい、シシ汁、焼き芋など、体が温まる飲食物が用意されるのだそうです。
このあと森の中の休憩スペースで松本さんにから様々なお話をお聞かせいただきました。その中のいくつかをご紹介します。
①アメリカでは不要なダムの撤去が進んでいる
②日本国内でも荒瀬ダムという撤去されたダムがある
③徳山ダムは建設されたものの水が活用しきれていない
④国から出るダム建設費用
利水(水の利用)には厚生労働省から、治水(災害防止)は国土交通省からお金が出ているそうです。無理な目的を複数掲げる理由はそのお金が目当てなのかもしれません。
ほたる祭り当日の準備
翌日、こうばる地区の公民館でほたる祭りの準備のお手伝いをさせていただきました。
強制測量の写真
ほたる祭りの準備で忙しい中、地権者の岩下すみ子さんに1982年に行われた強制測量の時の写真を見せていただきました。
すみ子さんによる講演の動画です。
動画の2分43秒から強制測量の時の様子が語られています。
次男が旅の疲れで公民館で眠ってしまい少し遅れて会場に向かったら、既に多くの人々が集まって来ていました。
石木川まもり隊のブースには松本さん
水没予定地に住む石丸穂澄さんは「何か自分にできることをしよう」と「こうばる通信」という新聞や絵ハガキを描いてます。
「ダム絶対反対」の看板も絵葉書になっていました。
石丸穂澄さんの活動を追ったニュース映像です。
松本さんが息子たちの寄せ書きにお返事をくれた菜の花ちゃんのご家族を紹介してくれました。
地元長崎にお住まいの菜の花ちゃんのご家族も「ほたるの川のまもりびと」を観てこうばるを訪れたのだそうです。しかし石木ダム建設予定地に近いからこそ、周囲の人達との話題にはなりにくい状況があるそうです。
菜の花ちゃんのお母さんが書いた記事がありますので是非お読みください。
石木川には多数の絶滅危惧種が生息しています。
写真がうまく取れなかったのが残念ですが、あたりが暗くなりホタルが沢山表れ始めました。森や木々が一斉に点滅する様子は不思議でひとつの生き物のようでした。
ほたるを鑑賞しながら会場の近くで行われていた写真展の会場に行きました。付替道路の工事が始まってからの写真が沢山展示されていました。
付け替え道路の工事に抗議する石丸穂澄さんの記事がありましたのでご紹介します。
石木ダムは長崎県と佐世保市の事業ですが、国による事業認定が行われた上で、各都道府県の収用委員会による決裁が行われると土地の強制収用が可能になります。強制収用とは人が居住している土地を取り上げることです。
もうひとつ直近の石丸穂澄さんのTwitterから。病気とダムに翻弄される半生。その上訴訟の尋問に出廷…かなり過酷なのではないでしょうか。
穂澄さんの発言の数々から、強制収用の決裁に正当性があるのかどうか疑念が生じます。
長男による写真展のアンケート
写真展を見終わって再びほたる鑑賞。手で捕まえられる程沢山舞っていました。
「またこの場所でお会いしたいですね。」菜の花ちゃんのご家族と握手してお別れしたのでした。
関連:石木川まもり隊のHPより
「こうばるほたる祭り2019 共鳴する人と蛍」
若い方々がこれほど「石木川」の貴重さを認識されているというのに、「なぜ老齢の方々が手を引っ込めて、それもビクビクしているのか。」「自然をこれだけ失ってきてしまったのは、自分たちに責任があった。申し訳ない。」「だから、共存を目指して、できるだけのことはする!」と何故言えないのか。まったく「いしきをかえるのはむずかしい」のか。何がそんなに難しいのか。
宮川誠様
コメントいただきありがとうございます。
計画が止まらない理由は利権がらみであると思されます。しかし政治の香りがするところになかなか共感が集まりません。だからこそ「ほたるの川のまもりびと」のような映画や「石木川のほとりにて」のような写真集で共感を広める必要があるのだと考えています。この記事もそのような意図で書いてみることにしました。多くの人の力が合わさればきっと止められると思っています。